【映画】南極料理人【生きるための工夫はこの時代に通じている】
こんにちは。
ceramicsstarです。
映画『南極料理人』。
こちらは海上保安官だった西村淳氏が、自身の経験を本にした「面白南極料理人」シリーズを映画化したもの。堺雅人主演では、公開当時大きな話題になったことを記憶に留めている人も多いのではないでしょうか。
南極という隔離された環境で8人の食事を担当することになった西村さんの奮闘と、男だけで気楽なようでいて、なかなかに過酷な日々を笑いと切なさで描いた作品について書いていきます。
作品情報
公開年度:2009年
上映時間:125分
監督:沖田修一
キャスト 西村淳(堺雅人)
本さん(生瀬勝久)
タイチョー(きたろう)
兄やん(高良健吾)
ドクター(豊原功補)
主任(古舘寛治)
平さん(小浜正寛)
盆(黒田大輔)
みゆき(西田尚美)
感想・レビュー
過酷な生活をユーモアで描いた視点のよさ
ときは1997年。
平均気温マイナス54度、標高は富士山より高い3800m 、南極の内陸の山上にある「ドームふじ基地」におよそ1年間の予定で赴任した8人の男たち。気圧も日本の6割程度で息切れがする過酷な場所で観測をする研究者たちの食を、料理人の西村は支え続けます。
食糧は主に、冷凍、乾燥、缶詰が基本。
低気圧だから沸点が低いという悪条件の中で、創意工夫をしながら料理をする姿はユーモアがあって楽しめます。
食べることは大切だけれど任務遂行が一番。「食べるために南極に来たんじゃない」というごもっともな言葉で、西村を切なくさせる隊員もいます。
でも次第に隊員たち全員が、生きるためには食べることが何より大切だと自覚して、揃って食を楽しむようになる姿は人間らしさを晒しており、本当の意味で隊員たちが打ち解けていく場面であって、この話のもっとも重要なところではないでしょうか。
食べるシーンはもちろんたくさん出てきます。天ぷら、刺身、巨大エビフライやエビチリ、カニにフレンチのコース、手作りラーメンと視覚で楽しめるのもこの作品の魅力です。
気になった点・8人分の料理は大変!
西村は海上保安官として料理を担当してきた人ですが、およそ1年間、毎日休みなしに8人分の料理を作り続けるのは想像を絶する重労働のはず。
材料も制限されているし沸点も低い、決して料理に適した環境ではないはずなので、実際はほぼずっと厨房に立つぐらいに大変ではなかったかと心配になりました。たまに隊員が餃子包みを手伝っていましたが、本当に猫の手も借りたいほどだったのではと想像しました。
しかも自分で備蓄のラーメンを食べ切ってしまいながら、ラーメンを食べないと眠れないと涙ぐむ隊員や、具合が悪いと業務を休み続け、隠れて大切な水を使いまくってシャワーを浴びる隊員など、癖のある人物も少なくはないので余計に大変です。
自分から志願したわけではない隊員の中には、できるはずがない脱走をして帰りたがる人がいる。そうかと思えば「自由だし、子供に小遣いせがまれないし、何を食ってもタダ。2年くらいいたって構わない」と平気そうな人もいる。
そのあたりの人それぞれの捉え方の違いもリアルな印象で共感できました。
今の時代だから感じられること
小さな問題を起こしながらも「ドームふじ基地」のメンバーは、次第に心を通わせるようになります。やがてまるで家族のように気のおけない仲間になっていく過程には、食を通じての繋がり大きかったという流れです。
このコロナの時代に改めてこの作品を見ると、隔離された状況や生活に制限があるところなど、色々と今の状況に置き換えて考えられる部分がありました。
現状を受け入れながらどう工夫すれば快適で楽しくいられるか、そのヒントが彼らの生活の中に隠されているように思えます。
任務を終えて帰国した西村は、
「終わってみれば、南極なんかに本当に行ったのだろうかと、嘘のように思える」
と家族と平穏な日常を過ごす中で、ふと思う。
今、世界で起きていることが、「こんな時代があったな」と嘘のように思い出せる日はいつ訪れるのでしょうか。
自分の家族とは違っていても衣食住しかも仕事も含めて24時間×730日一緒に過ごす人達はそんなにいないでしょう。
男ばかりで地球の最果ての南極での調査の仕事は大変だと思います。
映画を観ていると閉じ込められた空間でどこにも逃げることもできず、単調な生活を強いられ娯楽施設もない。いかに有意義に暮らせるかを隊員たちもまた工夫します。
豊原功補演じる「ドクター」が基地内に簡易的なBarを作ったり。と言うより酒飲むコーナーで備蓄用の酒はたくさんあるのですが、雰囲気だけでもと言う工夫したり。
南極の大陸での「野球」をしながら会話を楽しんだり、堺雅人演じる「西村さん」が割烹着を着てお母さんの様な台詞で食卓を囲む隊員に話し掛けるなど。可笑しいのですが、会話や行動の中でいかに日常の生活に近づけるかを楽しんだりしています。
現在、制限の多い新しい生活スタイルを問われている私たち。生活の中での楽しみながら、精神的にも強く生きて行かなければならない、南極の究極での生活をユーモアも交えて描いたこの映画はなにかヒントになるものがあるのかもしれません。
ceramicsstarでした。
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