『ホルスト・ヤンセンのこと』 生への渇望 死そしてエロティシズム【画家と作品】
こんにちは。
ceramicsstarです。
好きな画家は誰と聞かれたら何と答えるか?誰だろうと問いてみる。
独特の世界観を持つ『バルテュス』『エゴン・シーレ』『マルレーネ・デュマス』『フランシス・ベーコン』などが頭に浮かぶ。
唯一あげるならば衝撃的なエロスと内面の世界を表現する『ホルスト・ヤンセン』ですね。過去数回大規模展示があり、出掛けて見に行きました!!と言ってもマニアック画家でなかなか頻繁には開催されず巡回もされません。
ここではドイツの銅版画家『デューラーの再来』と言われ画壇に異才を放った
『ホルスト・ヤンセン:Horst Jansen』 を紹介します。
なぜこの画家が人を魅了するのか考えてみました。。
1929年ドイツのハンブルグで生まれた時、ホルスト・ヤンセンには、すでに父親がおらず、オルデンブルク出身の洋裁職人の母マーサ・ヤンセンと祖父母の元で育ち、その祖父母も10歳のときなくなり、14歳には母も亡くなっています。
その後、叔母のアンナの養子になります。幼い頃より絵画の才能に目覚め、ハンブルク美術学校に入学。入学資格は18歳でしたが、アンナが書類を書き換え、年齢を偽って16歳の時に入学。ハンブルク美術学校では、アルフレート・マウラー教授に教鞭をとり、「デューラーの再来」と表したのもマウラー。美術学校の1年先輩に、版画家のPaul wunderlich(パウル・ヴァンダーリッヒ)がいました。ヴァンダーリッヒには版画を教わっていたというのも驚きです。
ホルスト・ヤンセンを初めて知ったのは昔の恋人の下宿の部屋。とてつもなく大きなポスターが貼ってあり「この絵を描いたのは誰?凄い絵だな」彼女は「ホルスト・ヤンセン。好きなんだこの絵」と答えたのを記憶しています。
特大ポスターに描かれた絵は二つの人体が(片方は動物の仮面を被っていた)が枯れ木のように絡まった平面的な退廃的な装飾画でした。雰囲気が似ているシーレは知っていたけれど、それとはまったく異なる装飾的な不思議な画風で見たことのないものでした。
ポスター"LEAFLET 1. GALERIE BROCKSTEDT"。描かれているのはリハビリの器具に拘束されている獣と女性。エロティックで象徴的な絵です。
1982年に日本で最初の展覧会のポスターだと思います。
その後実際に初めて実物に触れたのは1991年小田急グランドギャラリーで。これは今でも記憶していますが脳天に稲妻が走りました。そして2回目に見たのがこのポスターにもある八王子美術館の2005年~2006年の巡回展です。
2005年12/12-2006年1/22に八王子美術館で開催された
生への渇望を感じる
素描、版画、水彩などを中心にしたものが多く、荒々しく且つ緻密に描かれた作風がとても人の心に突き刺さる。彼の出生は生まれる前に父親はどこかに遁走し消えてしまい、彼は母親が旅行中に生まれたとされています。若いころから素行も悪く、酒が入ると手がつけられなくなるほど荒れて人に迷惑を掛けて大変だったようです。しかしながら版画や絵を描くことへの執着と集中度合いは凄まじいものだったようです。その生きることへの激しさと自己の沈静した姿などの相反するものがぶつかっているように感じます。生への欲求が見るものを刺激し共感するのではないかと思います。
『わたしは一人でいられない。でも他人がそばにいるとわたしは混乱そのものだ!』
出典
H・ヤンセン
エロティックな性的な画風も生きることへの渇望感が満足することなく続いていたことを差し示しているように感じました。
下記の版画はBohemian's Gallery(ボヘミアンズ・ギャラリー)で展示されていた作品を見たこともあります。
『銅版画』の凄味
版画、素描、水彩画など多くの作品を残した彼の画風の特徴が発揮されるのはやはり銅版画です。精緻で神経質なエッチングの線、しつこいくらいに追い求めている独特な線。線の軌跡は艶めかしく退廃的で死をも予感します。静物画や人体も生と死の境界をさまよっています。
『私は、告白する。私は、自画像を描くとき自分をひとつの静物に見立てて「物」として鏡に映すのだ。』
『浮世絵』の影響と日本
葛飾北斎の浮世絵の影響を受け、自ら師とも仰ぐ葛飾北斎の真似をして「画狂人」と名乗ったり、絵の中に日本語が構成されていたりといたるところに日本の影響の痕跡を見ることができます。
浮世絵の様な平面的な画風や日本をモチーフや題材にした絵などもいくつかあります。
絵を描く紙にもこだわり 虫喰う古い紙、黄ばんでくすんだ紙を使ったりしていました。東京都文京区にある紙の会社『紙舗 直』の坂本直昭氏との交流もあったようです。
■PAPER NAOの紙に描かれたホルスト ヤンセンの画と銅版画
『ホルスト・ヤンセン』の『魅力』をまとめると
①自己の葛藤と生と死
②エッチングの筆圧と線
③退廃的で装飾的なエロティックなスタイル
④人物と人間以外のモノの曖昧さ
【所有の画集と書物】
右側の洋書は1991年の小田急グランドギャラリーの展覧会で購入。
そしてサイン入りのお宝です。
一度は訪れてみたい北ドイツのオルデンブルクに2000年「ヤンセン美術館」が開館。
比較的手に入りやすい本はこちら
『画狂人ホルスト・ヤンセン―北斎へのまなざし 』(コロナ・ブックス)
ceramicsstarでした。
下記サイトでオリジナル商品を販売しています。
よろしくお願いいたします。
minne.com
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