ceramicsstarブログ

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【彫刻】船越保武 祈りの彫刻 

 こんにちは。
ceramicsstarです。

 

いまだかつて芸術家の作品に涙したことはあまりないのですが、数ある彫刻家の作品を見て涙したことがあるのは2人だけ。ひとりはカミーユ・クロデール、そしてもう1人は船越保武の彫刻作品です。船越保武、彼の静謐な精神性を称える世界と生まれ持った力強い精神性は人をどこか違う世界へと導いていきます。

 

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 『二十六聖人殉教者像』

 

 

船越保武

1912年、岩手県二戸郡一戸町小鳥谷生まれ。父親が熱心なカトリック信者だったが彼は反抗して当時洗礼は受けなかった。県立盛岡中学校(現岩手県立盛岡第一高等学校)在学中に同期の洋画家松本竣介より知った高村光太郎訳の「ロダンの言葉」に感銘を受け、彫刻家を志す。 父親は保武が彫刻家になることを反対しておりましたが、当時の東京工芸学校在学中の実兄が理解を示して援助。22歳にして東京美術学校(現:東京藝術大学)の彫刻科に入学。卒業後に終生の友情を培うことになり後に亡くなるまで親交の深かった彫刻家『佐藤忠良』と出会います。

 

 

 

 

 

『二十六聖人殉教者像  

舟越保武は、1950年長男が生まれて間もなく急死したのを機に、家族全員が洗礼を受けました。自身が洗礼を受けた敬虔なクリスチャンであることから、キリスト教に関連する作品を数々制作していきました。その代表作と言われているのが、1962年に長崎に制作された『二十六聖人殉教者像』です。(所在地:〒850-0051 長崎県長崎市西坂町7-8)高村光太郎賞を受賞しています。実はこの作品を実際に目にしたくて2年前に長崎を訪れました。題材は二十六人の聖人の昇天の姿を彫刻群にしたモニュメントです。豊臣秀吉の時代、キリシタン禁止令が出された結果、捕縛され十字架に架けられ処刑された26人の殉教者。耳たぶを削がれ京都にて捉えられて市中引き回しの上、一か月間を要して裸足で長崎の地まで護送されこの西坂の地て磔刑されたと言われています。殉教者は数人の宣教師以外は下級武士と名もない職人に子ども3人です。これをモチーフとして制作したのがこのモニュメントです。高さ5.6m、幅17mにも及ぶ26名の等身大の像は十字架を模したもので大迫力です。4年半の歳月を経て完成したもので彼の繊細な数の少ない線によるデッサンから大きな紙に太く大胆な力強いデッサンを繰り返し制作したものです。予め大量の書物や文献を調べ上げたとも言われて各人物の具体的な人間像に迫っています。実際に目にしてみると其々の人の表情や衣装の量感まで克明に表現されていて個々の人体と群像のバランスが絶妙です。そして26人が今まさに空中に浮いて昇天する一瞬の浮遊感を足の爪先まで緊張感を持たせて確実に表現しています。船越はこのモニュメントが完成してからも毎年のように彫刻の状態を視察に来ていたと記念館の職員の方はおっしゃっていました。

 

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『聖女のシリーズ  

舟越保武は、1970年代一連の聖女のシリーズを制作します。やや赤みを帯びた白い大理石を使っていたようです。石の中に存在する女性ならばその頭像が見える様で、それを外に出して姿を現すように彫り上げ作品にしていると言われていますが、これは友人の彫刻家も言っていたように石の中にかたちが見えるもしくは想像できるそうですね。ただ船越の場合はその命の炎のようななにか人間の深い精神性が表現できる天性のものを持っていたのではと思います。彼の師匠は彫刻家ではなく石工と言われる職人です。厳格に石目を読んで毎日を彫り続ける不屈の精神はこの頃から亡くなるまで制作の中で持ち続けていたように思います。キリスト教の信者『クリスチャン』であることとキリスト教のテーマやモチーフについて語られることが多いのですが、それがすべてでは無いように思います。

 

 


舟越保武―まなざしの向こうに

 本の表紙:『聖セシリア』1980年

 

 

『不屈の精神 

『原の城』(1971年)『ダミアン神父』(1975年)『聖クララ』(1981年)などキリスト教をテーマにしたものなど傑作を発表しましたが、1987年に脳梗塞で倒れ、右半身が麻痺してしまいます。しかし、その後も2002年89歳で亡くなるまで左手一本で制作を続けました。今までの様に大理石で石を彫ることができなくなると、『ゴルゴダ』、『マグダラ』などブロンズ作品は粘土の箆を使って極限まで量感に迫り、素材が内包する力を浮き彫りにしています。この時代の索引は以前の繊細で緻密なこころまでも表現したスタイルとは大きく異なり荒々しくも強靭な精神力の伝わる作品を多く制作しています。その情熱には感服いたしました。

 

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■2015年に開かれた展覧会のリーフレットより 

2015年7月12日(日)~9月6日(日)

舟越保武彫刻展 まなざしの向こうに | インターネットミュージアム

 

静謐で深い精神性を帯びた『船越保武』の彫刻。石の中に静かに燃える炎が見える彫刻。船越の故郷の岩手県立美術館には多くの作品が所蔵されているので是非訪れてみたいものです。

 

ceramicsstarでした。

 

 


巨岩と花びら ほか―舟越保武全随筆集

 

 

 

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