ceramicsstarブログ

陶器とガラスのオリジナル商品の販売。デザインと企画制作をやっています。商品のご紹介、好きなものなどについて書いています。

【京菓子の神髄】手のひらの自然 京菓子展 2019 の公募展開催。【会場レポート1】

こんにちは。 

ceramicsstarです。

 

先回の公募展のお話の続きです。

ceramicsstar.hatenablog.com

 

晴れて『京菓子展 2019 手のひらの自然 − 万葉集』のデザイン公募の入選作品に選ばれ、京都で会場審査と展覧会が開催されました。

 

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開催場所は有斐斎 弘道館(本会場)と旧三井家下鴨別邸(特別会場)の2会場にて。

 

展覧会の後は京都ブライトンホテルにて表彰式と基調講演・シンポジウムが執り行われました。

今回と次回の2回にわたって、2箇所の会場の展示された京菓子と施設内をご紹介します。

 

  

京菓子展 2019 手のひらの自然 − 万葉集』 本会場

 

この公募展は実作部門とデザイン部門、実作部門(茶席菓子、工芸菓子)があります。
すべての京菓子を展示のため、2日おきに制作しているそうです。

生菓子なので乾燥してしまうからとのこと。

 

 

■有斐斎 弘道館(本会場)

ja.kyoto.travel

 

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この門をくぐり抜けて中に入ります。

 

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会場内はいわゆる和風建築の弘道館の中で行いました。

竹と鉄でできた展示台にひとつづつ京菓子が並べてあります。

 

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展覧会には出品者、関係者、取材される方々で賑わっていました。

右手奥は茶席が設けられています。

呈茶のために選ばれた京菓子を抹茶とともにふるまわれます。

 

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 その時にいただいた京菓子はこれです。
味は上品で素材の触感や香があり、甘さは控えてあり、口に入れた感触は記憶に残ります。

 

抹茶の入った『抹茶茶碗』は撮影できませんでしたが、かなりの品ではと推察されます。
たぶん通常では使われないないものが、この日のために用意されていたのではないでしょうか。
茶席の道具、掛け軸、調度品など、飾ってあった品々は素晴らしいものでした。 

 

**写真は展覧会で個人的に撮影が可能だったものに限り投稿しました。**

 

『有斐斎 弘道館(本会場)』の展示作品

 

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中央にあるのは梅の枝にみたてた工芸部門の実作。

銘『花簪』に合わせた梅の花に関連付けた掛軸が飾ってあります。

 

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■選んだ歌

『ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる』

■意味は。。

”御所に仕える人々は暇があるので梅の花を髪に挿してここに集(つど)っているのかな”

■個人的解釈。。。

朝廷勤務の役人は暇なのでお気楽な生活をしていて、特別休暇なんか取って花でも挿して遊んでるようなことを詠んでいるのかもしれません。

 

では個人的に好きな作品、そして特に良かった作品をいくつか紹介します。

 

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■ 銘

『心、潤す』

■詠んだ歌

『春の園紅にほふ桃の花下照る道にいでたつおとめ』

 

 

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■ 銘

『おもかげ』

■詠んだ歌

『ともし火の影にかがよふうつせみの妹が笑まひし面影に見ゆ』

 

 

 

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■ 銘

『淡月草』

■詠んだ歌

『朝咲き夕は消ぬる月草の消ぬべき恋もわれはするかも』


 

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■ 銘

『贈り物』

■詠んだ歌

『伊勢の海沖つ白波花にかも包みて妹が家づとにせむ』

 

 

 万葉集』でここまでできる

 

 ここからの3点は特に好きでよかったものを。

 

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■ 銘

『つらつら椿』

■詠んだ歌

『川の上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は』

 


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■ 銘

『梅花の宴』

■詠んだ歌

『正月立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ楽しきを経め 』

 

 そして一番よかったのがこれです。
やはり入賞作品です。

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■ 銘

『玉響』

■詠んだ歌

天地の遠き初めよ世の中は常なきものと語り継ぎ・・・(長 )』

気にいった作品なのでその先を調べてみると下記の様に書かれていました。

 

『天地(あめつち)の 遠き初めよ 世間(よのなか)は 常なきものと 語り継ぎ 流らへ来たれ 天(あま)の原(はら) 振り放(さ)け見れば 照る月も 満ち欠けしけり あしひきの 山の木末(こぬれ)も 春されば 花咲きにほひ 秋づけば 露霜(つゆしも)負ひて 風交(まじ)り もみち(紅葉)散りけり うつせみも かくのみならし 紅(くれない)の 色もうつろひ ぬばたまの 黒髪変り 朝の笑み 夕(ゆふへ)変らひ 吹く風の 見えぬがごとく 行く水の 止まらぬごとく 常もなく うつろふ見れば にはたづみ 流るる涙 留めかねつも』

 

 

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■個人的解釈

まぁ。。太古の昔からの時の流れと、世の無常観を表しているのではないでしょうか。

月の満ち欠けや春夏秋冬の季節の流れなど書かれています。
現世の人も同じ時の流れの中で日々を暮らしています。
やがては衰えて、黒々とした髪も白くなり、朝の笑顔は夕方には失われ、吹く風が決して目に留まらないように、流れ去る水が決して止まらないように。
そんな世の移ろいを見ていると、溜まった水のように、溢れ出る涙はとめどなく流れる。
そのようなやるせない心情を詠んでいるのではないでしょうか。

 

■作品をもう一度みてみると

白い部分は大地の様にもたなびく雲のようにも見える。
気泡の入った部分は地層もしくは空気層でしょうか。
とても観念的な無常な世界観を京菓子で表現しているように感じます。
人の気配や時の流れを止めて封印したようにも感じます。

暗く沈んだ空間に置かれていて宙に浮いていている浮遊感もありました。

捉え方は自由なのですよね。

 

 

『京都の菓子文化』を体験して

万葉集』は日本で最古の和歌集。

その世界観を京菓子に投影した今回の公募による展覧会。
平安期から現代にひき繋がれた京都の菓子文化、茶の湯などに触れる良い機会でした。

出品者の意図するイメージや心象風景をかたちにできる京都の菓子職人の方々の技巧の高さ、色彩感覚の鋭さ、心の豊かさなどは素晴らしい限りです。

茶席を催す側の、茶室のしつらえや調度品や抹茶茶碗、そして呈茶の際の菓子や食事などを決めて執り行う側からの要望を受けて、答えを出すのが京菓子職人と言うことをあらためて実感しました。

 

 

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中庭への入り口

 

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会場の手入れが行き届いた日本庭園

 

 

 

 最後に今回入選して出品したわたしの作品の紹介を。

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■ 銘

『惜別の泪』

■選んだ歌

『小竹(ささ)の葉は、み山もさやにさやげども、われは妹(いも)思ふ、別れ来ぬれば』

 

 

次回に続きます。
特別会場の旧三井家下鴨別邸の風景と入賞入選の京菓子を紹介しますのでお楽しみに。

 

ceramicsstarでした。 

 

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