愛と死と画家 エゴン・シーレとグスタフ・クリムト
こんにちは。
ceramicsstarです。
先日ニコラス・ローグ監督の映画紹介の中でグスタフ・クリムトとエゴン・シーレの絵画が使用されていると書きました。このわたしの好きな二人の画家のことを書きます。
クリムトとシーレ
当時のクリムトは新しい絵画のムーブメントとしてウィーン分離派を結成して象徴主義や表現主義の画家たちの先導を切って活動していました。一方ウィーン美術アカデミーに入学したシーレはアカデミックな大学の講義や技法には自分のスタイルは合わず失望していた時期に二人は出会いました。
シーレの絵画と才能を非常に評価していたクリムトは自分の絵と交換したり、画家のモデルの代金を肩代わりし、当時のウィーン工房への入会の推薦など彼のバックアップに惜しみなく力を注ぎました。
彼らは師弟関係と言うより、お互いを尊敬する年齢の離れた友人関係であったようですね。
絵画のテーマの共通点
彼らはお互いに共通のなにかシンパシーのようなものを感じていたようですね。ふたりの共通の絵画表現のテーマは『愛・死・エロス』です。そのテーマを基に独自のアプローチで絵画表現を実践していました。
クリムトは物語性や神話性そして装飾主義による華麗な象徴的な絵画。日本の平面的な装飾的技法(三角の市松や渦巻きなど)も積極的に応用しています。また奥行き感のない『金色』を多用しています。
シーレは人体の表現を極限まで行い、当時の世情から倫理的に避けていた死や性の表現と描写を追求していきました。その絶望的な退廃ムードが漂う画風は非常に心揺さぶられます。
2019年にはドキュメント映画『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』が公開されました。ここでは多くの絵画が紹介されています。
映画「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」公式サイト 2019年6月公開
モデル:ヴァリ・ノイツェル
彼らの共通の絵画の裸体のモデル『ヴァリ・ノイツェル』。彼女はクリムトからシーレに紹介したモデルであり、シーレが街で声を掛けたモデルとも言われています。
いわゆる絵画着想の『ミューズ』と言ったところでしょうか。
親しくなったシーレとヴァリは同棲生活に入りオーストリアからチェコの母方の故郷に暮らします。隠し立てしないふたりの関係は閉鎖的な田舎町ではあまり受け入られる環境ではなかったようですね。わたしはこの頃の彼の絵が大変好きです。
後にモデルとして娼婦が出入りしたり、14歳の家出少女が何日か住まわせたりしたことが災いして住民の通報で警察がシーレを逮捕、裁判所により絵画は没収され一部は焼かれて失意の中、ウィーンに戻ります。
前の事件もありシーレはその後他の中産階級の女性と結婚し、関係を続けたいシーレとは相反してヴァリは彼のもとを去ります。
その後、従軍看護婦となりクロアチアで23歳の若さで病気で亡くなります。
映画『エゴンシーレ/死と乙女』ポスターより
映画の中のエゴン・シーレ
2016年に公開されたエゴン・シーレの映画『エゴンシーレ/死と乙女』よりも個人的には好きなエゴン・シーレの映画がもうひとつあります。1980年公開の『エゴン・シーレ/愛と陶酔の日々』です。『エゴンシーレ/死と乙女』主役のノア・サーベトラは顔が端正で整い過ぎていて『エゴン・シーレ/愛と陶酔の日々』マチュー・カリエールの方がエキセントリックな画家の雰囲気を漂わせています。雰囲気が酷似していたのは映画2006年公開映画『クリムト』に出ていたエゴン・シーレ役のニコライ・キンスキーですね。
エゴン・シーレ /愛と陶酔の日々 EGON SCHIELE/EXCESS AND PUNISHMENT
作品情報
公開年度 1980年
監督 ヘルベルト・フェーゼリー
キャスト
エゴン・シーレ:マチュー・カリエール
ヴァリ・ノイツェル:ジェーン・バーキン
エーディト・ハルムス:クリスティーネ・カウフマン 他
音楽:ブライアン・イーノ、アットン・ウォン・ウェーベルン、メンデルスゾーン
撮影:ルドルフ・ブラチェック
脚本:ヘルベルト・フェーゼリー、レオ・ティシャット
原題:EGON SCHIELE/EXCESS AND PUNISHMENT
エゴン・シーレのスキャンダラスな人生を、退廃的な雰囲気を出しながらも冷静に冷たいタッチで描く影を曳きづった陰鬱な映画です。満たされない愛と死。第一次世界大戦に従軍するシーレが列車の中で苛立ちの中、描くデッサンやドローイング。
この映画で亡くなるヴァリ役のジェーン・バーキンの死のシーンは悲しかった。。
記憶に残っています。ブライアン・イーノの音楽も非常に効果的でした。
ceramicsstarでした。
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