ceramicsstarブログ

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宮沢賢治『銀河鉄道の夜』本当の幸いとはどこにある

こんにちは

ceramicsstarです。

 

昨夜は七夕。風がとても強くそして蒸し暑かったですね。

天の川も星も見えない今宵は好きな作家『宮沢賢治』のことを書いてみる。

 

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今夜は突風吹き荒れて小雨など降りつつ安定しない天気でした。なんだか仕事も落ち着かずモヤモヤしてる時思い浮かんだのが宮沢賢治が亡くなった翌年に発刊された短編小説『風の又三郎』の冒頭の一説。


『どっどど どどうど どどうど どどう青いくるみも吹きとばせすっぱいかりんも吹きとばせどっどど どどうど どどうど どどう. 谷川の岸に小さな学校がありました。』

            「【新】校本宮澤賢治全集」(筑摩書房、1996年)より引用

 

謎の転校生が小学校にやってきて、転校生の三郎をめぐる数日間が描かれています。村の子は三郎を伝説の風の精、『風の又三郎』だと思います。村の子の夢に『ガラスのマント』を着た三郎が空を飛んで出てくるなど不思議な出来事がいくつも起こります。そして数日後には転校生の三郎はいつの間にか何処かにいなくなってしまう。子どもの精神世界と東北地方の土着的なお話を融合させた物語です。宮沢賢治の童話や詩はある種独特の世界観があり、人を惹きつけるものがあります。

 

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風の又三郎 - Wikipedia

 

 

宮沢賢治と花巻

宮沢賢治の故郷の岩手花巻市に訪れたのはいつだろうか。20年前。もう思い出せないくらい昔。東北の花巻もまた不思議な空気感のある場所でした。花巻駅から賢治が教鞭を取った稗貫郡立稗貫農学校(翌年に岩手県立花巻農学校へ改称)や彼が考案した目のかたちをした不思議な花壇や造園を考えた公園、イギリス海岸と呼んでいた河原、そして教師を辞めて農業に従事した羅須地人協会。ここでは農学校の卒業生や近くに住む農家を集め、農業や肥料の講習、レコードコンサートや音楽楽団の練習を始めました。モダンな生活も好んだ賢治は「世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」として農民芸術の実践を試みました。

 

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■賢治の考える幸(さいわい)とは

宮沢賢治法華経を信仰、自分の裕福な家、郷土の悲惨な農業従事者の生活などに直面して作品には『幸福』『自己犠牲愛』の疑問について投げかける作品が多いですね。『グスコーブドリの伝記』『銀河鉄道の夜』なども其れにあたります。

わたしは、ジョバンニとカンパネルラの物語『銀河鉄道の夜』の中の『サソリの火』の話がとても好きです。この話に出てくる列車の乗客はジョバンニ以外は死んだ者たち。小さな子ども向けの話としてはやや恐ろしい話でもあります。

 

ルビーよりも赤くリチウムよりも美しい酔った様になってその火燃えている。これは蠍座の赤い星『アンタレス』のことですね。

 

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『蠍の火』 

①バルドラの野原に一匹の蠍がいくつもの虫の命を奪って生きながらえてきた。そして自分がいたちに追いかけられ逃げてまわり井戸に落ちて溺れ死にかけている。どうして蠍は自分のからだを黙っていたちに差し出さなかったのか悔いています。神様に対して自分の心の卑しさを語ります。今度生まれ変わるときは虚しく命を捨てずに皆の幸のために私のからだをお使い下さい。 そしていつか蠍は自分が真っ赤な美しい火になって燃えて夜の闇夜を照らしているのを見た。

 

 

 

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『カンパネルラの心情』

②友達を川から救って自分が犠牲になって死んでしまったことを母親はゆるしてくれるだろうか。母親が幸せと思うならなんだってする。自問自答します。でも本当の幸(さいわい)とはなんだろう。ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだ。だから許してくれる。悲しくせつなくもあるこの言葉。しかし揺るぎない自己犠牲の信念と確信がそこにはある。

 

 

 

 

■自己犠牲を自分に置き換えてみる

この話は清廉な心でみると広い意味での自己犠牲的な美しい愛の物語である。しかし生き物の食物連鎖の論理で言えば食べる側と食べられる側がいて生きていくためにはそれは特に考えることはなく必然なことである。ここに葛藤はないのだろうか。

自己犠牲とは真(まこと)の愛なのであろうか。わたしはひとになにかをして見返りを求めていないのだろうか。しかしひとが幸せになるだけで自分を犠牲にして自分は幸福と言えるのだろうか。これは不幸せではないか。人間はもともと卑しく生き延びてきた動物ではないか。自分だってそうだ。堂々巡りで決して答えは出ない。確信をもって迷うことなくひとの幸(さいわい)のために自己を犠牲にできるひとは強いのか。いつも日常の中で問うことがある。

そんなことを考えながら明日も働かなくてはいけない自分にモヤモヤしたきもちのまま本日も終了です。

 

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最後に『文部省特選』のアニメ―ション映画『銀河鉄道の夜』をおすすめします。

ますむらひろしの漫画を杉井ギザブロー監督で映画化したものです。出てくるのは猫たちです。

ますむら氏の猫はやや背が高く人のような画風ですが、アニメ映画版は可愛い背の低い猫がたくさん登場してきます。この映画化については賢治の実弟の宮澤清六さんは反対されていたと聞いた記憶がありますが、素晴らしい作品ですよ。映像は綺麗で心に響く声優の声や演出と別役実の脚本が良い。映画音楽は細野晴臣でイマジネーションを掻き立てる音は印象的で各ストーリーの映像にもピッタリの選曲です。

 

■アニメ―ション映画『銀河鉄道の夜

 


銀河鉄道の夜 [DVD]

銀河鉄道の夜 [Blu-ray]

 

 

■その他本の紹介

 


新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

 


銀河鉄道の夜―最終形・初期形〈ブルカニロ博士篇〉 (ますむら版宮沢賢治童話集)

 

 

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