老舗ホテル『ホテルオークラ東京』のロビーの美しさの秘密
こんにちは。
ceramicsstarです。
オリンピックが来年に延期となり、競技場、選手村、ホテルなど多くの建物がオリンピックに合わせて納期を詰めて建てられたり改修されたりしました。オリンピック需要は経済を活性化させたり、人や街に活気を生み出し、多くの人々を呼び込む大きな機会でもあります。それが一時的に停滞した感があります。
2020年オリンピック開催に伴い歴史的な価値のある老朽化した建築物を保存するのか、それとも新しく生まれ変わらせるのか幾つかの案件が検討されました。これは大変難しい問題ではあります。かつて『ホテルオークラ東京』解体を前にあのエントランスの椅子に座りたくなった。そして消えてしまう前に写真に残して置きたかった。昔から好きだったホテル在りし日の『ホテルオークラ東京』について書きたくなった。
ホテルオークラ東京の正面玄関。全体プランは設計委員会の5人全員で提案し小坂秀雄氏の案で。上層部のベランダは覆輪目地によるなまこ壁と低層部の玄関の軒回りにあしらわれた三角形の陶板は魚や蛇の鱗のような『鱗紋』。今ではあまり行われない手間の掛かる意匠。全体のプロジェクトには最終的に全9名の建築家が設計に携わった。
谷口吉朗の目指すもの『ロビー空間』
『ホテルオークラ東京』は1962年『東京オリンピック』に向けて「西洋の機能性を取り入れていくと同時に、日本の伝統美を生かしたホテル」を目指し、東宮御所、竹橋の東京国立近代美術館を設計した谷口吉郎氏が設計委員長としての任につきました。谷口吉郎氏の設計担当は具体的にはエントランスのロビー、オーキッド・ルーム、オーキッド・バーです。
■ロビー
正面のから見たロビー。右手に階段があり敢えて階段下の部分にエントランスを設けている。このスキップフロアともいえる高低差は絶妙。
椅子に座って逆方向から見ると回廊と柱まわりが見える。階段から視線を外すことでエントランスのゆとりとプライベート感を一層感じさせる。梅の花のテーブルと椅子が良く見える。
わたしが好きなロビーを上から見た空間。和紙を通しての柔らかな光を前面に受けた包み込むような空間。日本らしさを表現している和の装飾美は圧巻。
『ロビー空間の和の意匠』
ホテルのロビーは優美で洗練された建築空間の美しさを讃えています。建物の装飾については、日本風装飾画の伝統ながら、尾形光悦、俵谷宗達に見られる優美さを追求するというコンセプトのもと伝統的な和の意匠や素材を採用しています。
障子の下からは外を眺めることができる日本家屋の建築様式を巧みにホテルと言うパブリック空間に取り入れている。
麻の葉紋:木組み格子と障子
二等辺三角形の組み合わせによる木組みの四方連続紋様です。単純かつ極めて技術のいる紋様です。釘を一本も使わない木組みの芸術品。麻の葉のデザインが施されています。
四弁花紋:つづれ織りの壁画
色絵磁器の人間国宝富本憲吉氏がデザインした『四弁花紋様』を、京都西陣の龍村美術織物に依頼して純絹のつづれ織りにしたもの。蘭をふくれ織りで、屏風風仕立。
切子玉型:オークラ・ランターン。
古墳時代の飾り玉に見られる切子玉型をデザインしたものです。五角形の板を10枚つなぎ合わせて切子型とし、五連つなげて一つとしてまとめた照明器具。
最後に『オーキッド・バー』の写真を載せてお別れです。
店内に埋め込まれた時代を感じさせるステンドグラスが綺麗でした。
■最後に
2019年に竣工した新しい『ザ・オークラ東京』は谷口吉郎氏のご子息であり、東京国立博物館法隆寺宝物館、豊田美術館等を手がけた谷口吉生氏を設計チームに起用して、旧館の『日本の伝統美』を踏襲したとか。今は2棟の高層タワーになって様相が変わってしまいましたが『ロビー』はいかに。画像では見ましたが一度機会があったら見てきます。
新しいオークラは、『ホテルオークラ東京』から『ザ・オークラ東京』という名前に変更になりました。ヘリテージ館とプレステージタワーの2館で構成されています。
ceramicsstarでした。
■『ザ・オークラ東京』
Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2015年 01月号
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