【展覧会情報】『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』 その2【建築とデザイン】
こんにちは
ceramicsstarです。
先回『ルート・ブリュック展』の陶板作品にフォーカスして、その技法について書きました。今回は建築とデザインについて書こうと思います。
注目したのは、建築に関わる部分で陶壁のデザイン制作についてです。
2020年5月現在は岐阜現代陶芸美術館にて巡回中です。(コロナウイルス のため休館中)
ルート・ブリュックの陶板による空間表現について
ルート・ブリュックの陶板のモチーフには、建物のかたちを取り入れたものがあります。
これらは建築のシリーズと呼ばれており、長方形の板から建物のからちを切り出したものが多く存在します。
『ヴェネチアの宮殿:鳥の扉』 1953年
『ヴェネチアの宮殿:鳥の扉』を斜めから見る
平面的な陶板から、空間を表現したい欲求が伝わってきます。
520×310(mm)サイズの大きい陶板の反りや変形を防ぐため、また側面に奥行き感を出すために45mmの厚みを設けているように思います。
そして側面にも釉薬とエッチングのような加飾があり、建築物のかたちを二次元から三次元に変換して表現するきっかけになったのではと思います。
『ヴェネチアの宮殿:鳥の扉』部分拡大
『ヴェネチアの宮殿:リアルト橋』1953年
これまでの陶板は、下記の様な『絵』のフレームの中に存在していました。
『シチリアの教会』1952-1953年
ルート・ブリュックのレリーフ陶壁について
ブルュックは1960年~1970年代にかけて、円筒をスライスしたような形の、灰皿などの製品から派生し、更に細かいピースの集合体のようなレリーフを制作します。
大小さまざまなひとつのピースはモザイクタイルの様に、相互に色のハーモニーと凹凸のリズムを奏でた壁面を構成します。
壁画をデザインするにあたっては、現在もこのようにタイルのデザイン検証をしています。
床面に陶器のピースを置き、かなり高い位置から眺めて建築空間や作品としての壁面を想定して色の組み合わせ、バランス、量感などを見ながら全体のかたちを決めていきます。
上の写真は白のレリーフがベースになっていますが、ここに多色の要素が入ってくると更に意匠の選択が複雑になり、デザイン検討の難易度が高くなります。
ピースを置き換えてみたり、他のピースを差し替えてみたりを果てしなくこの作業を繰り返します。
きっとブリュックもこの作業に時間を要して作品の完成度を上げていったのではと思います。結構頭の痛い作業ですね。
ひとつの決まった答えがないものに対して、地道に取り組む姿勢を想像しながら『ものづくり』の中で自己表現の追求を高めることの大切さについて考えさせられました。
それでは今回はこれまでで。
cermicsstarでした。
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