【映画】『イエスタデイ』幸運な時代に生まれたものだ【ネタバレ・感想】
映画『イエスタデイ 』。
もしも、世界から、ビートルズが消えてしまったら?
しかもビートルズの曲を知っているのが、自分一人だったら?
というお話です。
イエスタデイ
作品情報
公開年度 2019年
上演時間 117分
監督 ダニー・ボイル
キャスト
ジャック・マリク(ヒメーシュ・パテル)
エリー・アップルトン(リリー・ジェームズ)
エド・シーラン(エド・シーラン)
デブラ・ハマー(ケイト・マッキノン)
ロッキー(ジョエル・フライ)
予告
面白いことろ・コピーでも満足できるストーリー
主人公のジャックは、スーパーの店員をしながらソングライターとして活動しているが、ぱっとしない日々。友人のエリーは教師をする傍ら、ジャックのマネージャーをしてくれていますが、正直先は見えません。
ところが、ある日、大規模停電が起きて街中が停電に。ジャックは自転車で転倒して前歯を折る怪我を負います。散々なジャックを友人たちが集まって慰めてくれ、そこで何気なく弾いたのがビートルズの名曲「イエスタデイ」。
曲を聴いた一同はシーンとなって聴き入った後、「こんないい曲をなぜ発表しない」と驚いて疑問をジャックに投げかけます。
最初は友人たちが何を言っているのかわからないジャックですが、ネットで調べてビートルズが存在しないことを知って驚愕。
行きがかり状、ビートルズの曲を発表することになっていきます。
劇中に流れるのはビートルズの曲だらけです。オリジナルではないですけど、この映画の中ではオリジナル。
ビートルズの曲は使用料が高すぎて手が出ないという話をよく聞きます。
『青春の殺人者』の長谷川和彦監督もそう語っています(それでゴダイゴ になった)。
ショーン・ペン主演の『アイ・アム・サム』では、ビートルズの曲がやたらと流れますが、すべてコピー曲です。やはり高過ぎて使えなかったのが理由だとか。
そういう意味では、この映画『イエスタデイ』は、ビートルズの曲を初めて発表する人という役柄なので、オリジナルは必要ない。
ストーリーとしても商業的にも無理のない展開です。
(エンディングには本物が流れます。やっぱり本物はいいねという。)
このジャックを演じているヒメーシュ・パテルという人、実際、歌がうまい。
歌手ではなくて俳優だそうですが、歌でも全然いける。これが本当に初出の曲であったら、世の中がひっくり返っただろうというのには相応しい配役です。
ライブシーンもなかなかよいです。
いくらビートルズの曲が名曲であっても、下手な人が歌ったらさすがに感動させられないでしょうから。
エド・シーラン登場
ジャックの評判を聞きつけたエド・シーラン(本物)が現れ、ライブのゲストに呼び、即興で「ロングアンドワイディングロード」をつい歌ってしまう。
そこで観客が「シーン」と聴き入ってしまうのは笑えます。
ビートルズの曲なので、エド・シーランを打ち負かしてしまうのですが、ジャックが喜んでいるかといえば微妙です。
ポールマッカートニーの名曲を歌うことで、主人公のアイデンティティがわからなくなり悩むところです。認められるなら本当は自分の曲がいいい決まっています。
残念に感じたところ・ビートルズは4人だから美しい
ポールの曲、ジョンの曲、ジョージの曲、リンゴの曲を一人のシンガーが自作として発表するのは、無理があるような、ないような。
ビートルズは4人。1人で想像できる世界観ではありません。
実際彼らは、あらゆるパーツを削っては足してを繰り返し、作品をつくり上げていたのではないでしょうか。
クイーンの4人も、大喧嘩しながら活動していたことは有名な話で、その辺りのことは『ボヘミアンラプソディ』でも触れられています。
成功したロックバンドは、ちょっと一般人には考えが及ばないような切磋琢磨を繰り返していると思うのですが、この映画では深く考えずに楽しんだ方がいいのは間違いがないでししょう。
ネタバレ・サクセスストーリーではない
このまま一人ビートルズとして頂点を極めることになるのかと思っていたら、時代の流れを感じさせるところも出てきます。
「アビー・ロード」「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」 「ホワイトアルバム」を酷評され、新しい音楽をつくるように求められます。
またジャックは、盗作がバレるのではないかと、不安を抱えながら、ビートルズの曲を発表し続ける葛藤も抱えている。
マネージャーのエリーとは付かず離れずの関係でしたが、彼が売れていくことで関係は変わってしまいます。
やがて、ジャックの元に、ジャックと同じようにビートルズが存在した世界を知る人が現れ、ある「人物」の居場所を教えてくれます。
そして、その「人物」が、人生にとって大切なのは、サクセスではないことをジャックに教えます。
人生なんてボタンの掛け違いで大きく変わってしまうかもしれない、けれど愛は普遍だ、そんなメッセージを受け取れる流れです。
まとめ
歴史は点ではなく線。
いろいろなものが影響しあいながら存在するものだから、ビートルズがなくなったら、エド・シーランも同じ形で存在しているかはわからない。音楽だけではなく芸術の世界が大きく変化してしまいそうです。
それにしても、ベートーヴェンやモーツァルトと同時代に生きた人たちが、自分たちは幸せだと感じたかどうかはわかりませんが、ビートルズのメンバーが生存する時代を生きる我々は、偶然とはいえ幸運だなと改めて思ったりしました。
ceramicsstarでした。
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